Pet Dog Training TIPS Vol.1 VOL.20
2003
現実の世界

 新しい子犬を迎える準備は万全。良い獣医師も見つかりました。一番いいドッグフードを選ぼうとオプションも調べ済み。家も子犬に安全仕様にしました。値段の高いものや、少しでも危険のあるものは、子犬の届かないところに置きました。
イラスト
 クリスマスツリーの飾りも今年は上半分だけです。ゴミ箱は冷蔵庫の一番上に移動しました。子犬が入ると困るところにはゲートや囲いを設けました。安全な噛むおもちゃ、トイレのスケジュール、社会化メニュー、パピークラス、リードをつけてたくさんのお散歩・・・。家族で、犬をよく見ておく、ゲートを閉める、用心するなどしっかりと計画を立てました。カラーとリードを着け、抱っこされることやクレートに入ることもあり、見守られて愛された子犬時代を過ごしました。安全で危険のない生活だったのです。

 たくさん時間が過ぎ、子犬のいたずらもずいぶん少なくなりました。家に泥をつけて入ってくることもありません。どこにでも連れていける自慢の子になりました。自分のおもちゃ以外のものを噛んでしまうこともありません。みんなから愛されるこの家族の一員は、マナーもよく家族のライフスタイルにすっかり落ち着いたのです。お互い信頼関係で結ばれています。

 トレーニング・クラスへも行きました。オスワリ待ってやフセ待っては100%完璧です。イベントでは入賞することもありました。ケネルクラブのトレーニングクラスでは、デモ犬を務めました。介護施設を定期的に訪れ、入居者からもとても愛されています。レトリーブもできるし、ハンドシグナルにもよく反応します。お手、ゴロゴロ、吠えるなどのトリックももちろんできます。代数学でも教えようかと思うほどです。公園にもよく連れて行きますが、もちろんリードをつけて。遊びの日を定期的に決めています。他の人の犬はみんなオフリードにしています。リードをつけているこの子だけ、遊んでいるとリードが邪魔になることがあります。友達が「リードを放しなさいよ!」と声をかけます。放してみました。犬が十分楽しんでいます。問題なんかありません。呼べば戻ってきます。これまで安全には慎重すぎるのかもしれません。オフリードで遊ぶ公園内の犬を見てみてください。みんな問題なく過ごしています。

 数ヶ月、数年と時が過ぎました。問題は一度も起こしていません。子犬の時にどうしてあんなにリードをつけていたのか、今では思い出せないくらいです。必要なんてなかったんです。何年も目に見えないリードをつけて過ごしてきたようなものです、なぜなら完璧なオフリードでのコントロールが可能だったから。

 こうして無事に過ごしてきました。しかし何年も前に植えられた大きな問題の種が芽を出そうと待っていたのです。これが数ヶ月で芽を出すときもあれば、数年かかる時もあります。しかし種は確実にそこにあり、すべての要素が揃い芽が開く時を待っているのです。
買い物から家に帰りました。もちろんその子も一緒にお出かけしました。ドアを開けて荷物を降ろすあいだ待つように言いました。そして気づいた時には、いなくなっていました。リスを見たのでしょうか?それとも猫?もしかしたらただ走ってみたくなったのかもしれません。誰にもわからないし、今となってはどうでもいいことです。

 その子が家に戻ることはありませんでした。犬が前にいることさえ気づきもしなかったという車にはねられてしまったのです。一瞬のことでした。

 過信は禁物です。大切な友達の命を危険にさらさないで。そして「自分にはありえない」と決して思わないで。

 これはニュージャージーに住んでいたスカウトという犬の本当の話です。


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