Pet Dog Training TIPS Vol.2
<2004>No.14
犬を抱きしめる

 抱きしめるという行為はすべての霊長類にみられます。
 人間、猿、チンパンジーなど二足歩行するものは、愛情や守ることをしめすため、もしくは共通のおそれや悲しみの形として抱きしめ合います。一方犬は四つ足歩行します。「腕」は持っていないのです。犬は「抱きしめる」ことへの理解を持って進化していません。抱きしめることに最も近い形またはボディランゲージは、マウントすることや他の犬の首や背中に前足や頭を乗せることです。他の犬の上に頭や前足を乗せることは支配のシグナルであり、他の犬が服従的に受け入れなければ、攻撃性に変わります。犬にとって抱きしめる(犬の背中や首に腕をまわす、または犬の背中に寄りかかる)ことは、いくつかの支配性をあらわす形に最もよく似ているのです。ですから、抱きしめられることに慣れていない犬、もしくは見知らぬ人(または度を越しているような子供)から抱きしめられた犬は、支配や攻撃と捉えて、相応の反応をする可能性があります。

 犬はトレーニング性能が驚くほど高い動物なので、いったん人を信用すると(よく社会化された犬はあらゆる環境で、すべてのもしくはほとんどの人間を信用します)、人から抱きしめられることや体に触れられることを、喜ぶようになります。しかしライバルの犬から同様の接触を受けた場合には、戦いか逃げるかの準備をするシグナルになります。

 犬はスペースに関しては、非常に神経質です。さまざまな要因で決まる「セーフティゾーン」または「社会距離」が、人間同様犬にもあります。通りであった見知らぬ人が近づいてきて私を抱きしめたら、心地よくありません。でも知り合いがやってきて握手をするのは、問題ありません。犬にもこういった社会距離の礼儀が必要なのに、私たち人間は考えもなく犬のセーフティゾーンに入り込んでしまうのです。ベッドや床に寝そべっている犬の近くに横になり、自分の体に前足を押しつけさせたことはありますか?スペースを得ようとする犬の自動的な反射反応が見られるはずです。

見知らぬ犬やあなたを完全に受け入れ信頼関係ができあがっている犬でなければ、抱きしめたり、近い距離での接触は避けましょう。小さな子供のどの犬でも抱きしめようとする傾向には、特に注意してください(報告されている犬の咬傷事故の多くに子供が関係しています)。

見知らぬ犬の背中、首、頭は撫でないようにしましょう。むしろ人間からするとおかしな場所、胸やおなか、あごの下などから始めます。

自分の犬でも耐えられる限界を越えないようにします。そして犬が不快に感じていることをあらわすどんな小さなシグナルも常に見逃さないようにし、スペースを侵害するような形ではない関わりを持つことで、私たちがきちんと犬のスペースを理解していることも示します。

抱きしめられることに対する犬の耐性と必要とする社会距離は、常にそして状況により変化します。ある時は10秒間抱きしめられるのが平気でも、別の時には2秒間でひどく興奮するかもしれないのです。

犬が喜んでいるのではなく耐えているようなサインを出していないかを見ていましょう。以下にあげるような行動がいくつか見られるすると、犬は抱きしめられるのを楽しんでいないかもしれません。あくびをする、まばたきを繰り返す、頭をそらす、目を細める、舌をペロペロと出す、筋肉がこわばる、のがれようともがく、ふるえる。


Return GO TOP
(c)copyright 2003 LEGACY JAPAN, All rights reserved.
〜文章および画像の無断転載・複製を禁じます〜