 |
VOL.15
2003 |
|
消去という有力な道具
消 去
消去というのは、行動を維持する強化因子を出さない原理です。これはなんの結果も出さないことで行動を単純に「無視する」ということではありません。消去を有効に行うためには、消し去りたい行動が以前に何らかの形で偶然にでも強化されていたものでなければなりません。例えば、アテンション、フード、ひっぱりっこなどによる正の強化です。 |
 |
負の罰と消去の違い
この2つは同じように聞こえますが、実際には異なるものです。行動を止めさせるために負の罰を用いるには、過去に強化されている必要はありません。その時起きている状況に対処するものです。犬が自由に手に入れることができたものを取り去ります。自由を取り去る、(クレートにいれるというものひとつの例です)、持っているテニスボールを取り上げる、顔の真正面にあるレバーのひとかけをとりさる、または犬の耳をさすっていた手を止める。これらはみんな「ご褒美」を取り去ることになるのです。
消去のバースト
これは以前報酬が得られた行動に報酬が出なくなった時、一時的に短期間、その行動が悪化するという意味です。
おねだりという行動を例にとってみましょう。しつけ教室にやってくる生徒が、これまでは食事中、犬に食べ物を分け与えていたとしましょう。ある晩食べ物をあげるのをやめます。すると良くなる前に、行動は悪化します。つまりおねだりが減る前に、おねだりをする回数も、しつこさも、時間の長さもすべて悪くなります。生徒が事前にこれが起きるのを知っておく事は非常に大切です。私であればこう言います。「悪くなったのね!それは素晴らしい!消去のバーストが起きているということよ!」と。
もう一つの例、
「お金を入れてボタンを押す」行動:お昼時に毎日ジュースの販売機の前で立ち止まり、お金を入れ、ボタンを押してジュースというご褒美を得ていたとします。「お金を入れてボタンを押す」行動は、過去に強化されていますね。ある日突然機械が詰まりました。おそらくあなたは激しくボタンを押すでしょう!通常よりも回数多く、強く押しますね。がっかりして、さらにお金をいれてみるかもしれません。しかし次第に「お金を入れてボタンを押す」行動はしだいに消え去り、その場を立ち去るでしょう。
自然回復
消去された行動というのは、行動のきっかけとなる引き金が現れると、将来再び起こることがあります。これは行動の自然回復または一時的増加といわれます。こういった万一の事がおきる可能性を、生徒に知らせておきましょう。これは消去が行われていることを意味するのです!これを小さな「テスト」ととらえ、テストに合格する事を考えましょう。引き続きご褒美は出しません、そうしないと犬を変則的な強化のスケジュールにのせていることになってしまいます−その結果犬は報酬を得るための賭けを続けるでしょう。
おねだりという行動:飼い主が食事中食べ物を犬に与えています。それを止めると、犬はおねだりを止める前に、より強くおねだりをします。たとえ行動が良くなったり、完全に止まったようでも、次の食事の時にはまたおねだり行動が現れる可能性が常にあります。いいかえれば、ご褒美さえでなければ、行動は次第に消えていくのです。しかし引き金が現れれば、いつでも戻ってくる可能性があるのです。
「お金を入れてボタンを押す」行動:翌日のお昼ご飯時に、ジュースの自動販売機の前を通り過ぎました。もう一度試してみるかもしれません。しかしやはり動かないとします。するとお金を入れてボタンを押すという行動をするかもしれませんが、おそらく前日ほどは長い時間を費やさないでしょう。
消去と正の強化は、レガシーのプログラムやその他世界中の動機付けによる犬のトレーニングプログラムで、もっともよく用いられれる2つの原理です。 |
|
|