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VOL.22
2003 |
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犬のように考える:般化と弁別
最近私の上級者向けワークショップにご参加なさった方は、「弁別」のエクササイズをなさったことと思います。臭いと形、両方を行ないました。トレーニングを楽しむこと学習の原理を学ぶことが目的でした。科学。家庭犬のしつけ方教室では、飼い主に科学の応用を教えているのです。犬達にはクラスで学んだことを、すべての環境で対応できるようにさせる必要があります。基礎となるオスワリ、フセ、オイデ、リードを引っぱらずに歩くなどがきちんとできる状態にするということです。犬とヒトでは情報処理の形が異なります。 |
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般化とは、もとに学習された環境と異なる環境下でも、同じ概念を適応できる能力のことをいいます。人間はこれを容易にかつ自然に行ないます。例えば、子供の時靴に教わった靴紐の結び方。一旦理解すれば、その後は問題なくできたはずです。靴がテーブルの上にあって、その中に足が入っていない状況でも!その靴が競技者向けの靴であろうと、革靴であろうと。靴紐がナイロンでも革でも、白でも黒でも。人間であるあなたは、靴紐を結ぶということを素早くそして完全に般化することができるのです。こうして靴紐は問題なく結ぶことができるわけです。般化は「大きな画像」です。
かわって弁別とは、もっと画像の細部に焦点をあてる能力です。人間は弁別よりも般化をより容易に行なうことができます。テレビのコマーシャルをみた後、それについて尋ねられたら、きっとこのくらいは言えるでしょう:歯磨き粉の宣伝だった。ブランド名やコマーシャルに出演していた女性の微笑が素晴らしかったことも覚えているかもしれません。でも女性の着ていた洋服の色は?歯磨きをしていたのは右手だったか、左手だったか?ブラシという言葉が何回使われたか?となるとどうでしょう?
これに対し犬は弁別に優れています。犬にオスワリを教えても、犬にはそれが「お尻を床につける」・・・何があろうと、どこでもいつでも・・・という意味に必ずしもなっていないのです。般化がうまくできていないと、オスワリが「他の犬が近くにいなくて、ご褒美バッグを身につけたお母さんがトレーニングクラスに出席している時に、お母さんの正面でアイコンタクトをとりながらお尻を床につけること」という意味になっているかもしれません。これは弁別です。
嫌悪刺激を除き、般化は犬にとって易しいことではありません。危機回避という根強い生物学的進化により、犬は生き残りのメカニズムとしては容易に般化します(多くの場合が不適当なのですが)。犬に般化してほしい場合、例えばオスワリがスムーズにできるエクササイズなど、こうなると途端に難しくなってしまうのです。おそらく犬にとっては、人間の弁別くらい難しいのではないでしょうか。
すべてのエクササイズについて重要な基準を個々にきちんとこなすよう生徒さん達に伝えるため、私は上記の説明を利用しています。
エクササイズのひとつの基準を難しくするのなら、他のものを易しくしましょう。こうすることで失敗を減らし、成功させてご褒美を与える機会を増やすことができます。例:ディストラクション(犬の気を散らすもの)の練習をしているのなら、犬から離れる距離を短くし、エクササイズを行なう時間も少なくします。
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ディスタンス(距離)
キューを出す時のトレーナーと犬の距離を変える。 |
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デュレーション(時間)
犬が行動を続けていなければならない時間に変化を持たせる。 |
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ディファレント・エンヴァイラメント(異なる環境)
何があっても犬が確実に行動を行なえるようになるまで、環境をいろいろ変えてみましょう。例:場所、床の表面、飼い主の態度、時間帯、単独またはグループ、リードのあるなし、フードやその他のご褒美、ご褒美が犬に見える見えない、キューを少し変える、音や視覚的なディストラクションなど、犬が実社会ででくわしそうなものすべて。
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